先日ですね静岡の同志のお客様より、このようなイラスト製作を依頼され楽しく作業させて頂きました、誠に有難うございます。暑い夏にぴったりの熱い作品となりましたね。
ところで少し前にこのようなCDがでました。ジャケットは’77年日本初来日時の写真が使われ、タイトルは”KABUKI・BEASTS Kyoto 1977”で邦題は「狂獣四人男 京都一九七七」というものです、ウ〜ム何ていいかげんなんだ。
「KISS 鬼巣」なんて表記からしても怪しいこのCDはもちろんKISSオフィシャル版ではなくいわゆる「海賊版」というやつです、ブートレグですね・・・・
KISSの海賊版音源なんて星の数ほどありまして、最近は無理に求めようとしなかったのですが、このCDにはちょっとビックリしてしまい即効入手となったのです。だってKISS初来日時の音源は天下のNHKが放送した「ヤングミュージックショー」をはじめとする東京公演の「日本武道館」のものしかこれまで出回って無く、京都公演の「京都会館第一ホール」のものがあったなんて全く知りませんでした。
このCDのオマケとしてミニポスターが付いているのですが、そこにはこの音源が録音されていると思われるソニーのカセットテープが写っていて、肉筆で生々しく「KISS京都公演 1977. 3.26(土)6:30pm 京都会館第一ホール2階9列86番」と書いてあります。2階席の最前列端っこにて必死に録音した模様です・・・・まさに「隠し録りここに極まる」といった感じで、よくもまあ30年もこの音源を出し惜しみしていたものです。京都公演77分の収録ですが音質はソコソコで、こちらを提供して下さった隠し録り名人に感謝です。
で、こういった海賊版なのですが、ついこの前の70年代後半にKISSを聞き始めた頃は私にとって全く謎の物体でありました。だってレコードっていうのはビクターとかおっきい会社がアーティストと契約して出していて、街のレコード屋さんとか楽器店で正規ルートで購入するものであって、輸入版なんか「付録も付かないし安っぽくて変なの」と思っていたくらいの無知でありました。
ところがですね、ミュージックライフなんかの音楽雑誌を見るようになると、巻末のモノクロページの広告に「貴重盤」と称したレコードを売ってるお店が数店舗載っています。
「貴重盤とは何のこっちゃ、一体何が貴重なんだろ??俺にとってKISSのレコードは全部貴重なのに・・・」と疑問が生じてきました。 そうこうしているうちに80年代に入ってしまい、いてもたってもいられなくなり「一体貴重盤とはなんぞや、この目で確かめねば!!」と思い立ち、モノクロ広告をたよりに東京へ繰り出すことにしたのです。「貴重盤」を売ってるお店は新宿界隈に集中してることが分かり、京急と国鉄を乗り継いで新宿の街に繰り出しました。新宿なんて小学生の時に小田急ミニカーフェアに繰り出して以来の再訪でした。
ミュージックライフの地図を頼りに裏通りにある貴重盤なお店を探し当てると、そこは街のレコード屋さんとは違い怪しげな店構えで、レッド・ツェッペリンがガンガン鳴り響いておりました。小心者としては店に入るのも恐ろしい位です・・・・
勇気を振り絞って入ろうとすると長髪の店員さんがいきなり声を掛けてきました。「ウワッ殴られるぞ」と身構えたら「カバンはここに置いていって下さい」と入口横のベンチみたいなのを指さしました。「ハイ、すみません」と反射的に答えてカバンを渡して店にやっと入れました。
店内には沢山LPレコードが並んでいて、やっとKISSの棚を探し当てました。「こ、これか貴重盤というのは!!」とジャケットを棚から引き抜くと「あれ、なにコレ???なんか変??」と思いながら掴んだLPレコード達はどれもこれも真っ白なジャケットでそれにコピーしたモノクロKISSの写真がペロンと貼ってあるだけなのでした。自分でデザインした方がもっといい物が出来そうだと思いました。
KISSと言えばハデで豪華なデザインのジャケットがウリでしたが、「貴重盤」のお店にあった「貴重盤」はまるで手作りのような風情を醸し出しておりました。 「どれもこれも何だかわからんが、どのジャケットにも日付や地名が書いて有るからきっとライブ・バージョンのレコードなんだ」と解釈出来ました。 が、値段が高い、高過ぎる!!通常のオフィシャルLPレコードよりも高い金額で売られていて「なんでこんないい加減なジャケットなのにこんなお値段なの??」と一人ブツブツほざいておりましたが、中身は興味津々なのでビックリなお値段でとりあえず1枚だけ買って帰ることに致しました。
ジャケットの写真が気に入りこれに決めたのですが”Destroys Anaheim”というタイトルで’76年8月20日に収録されたのアナハイム・スタジアム公演のものでした。ウ〜ム、夢のカリフォルニアだぜ!!!これが「貴重盤」つまり「海賊版」との出会いとなりましたが、家に帰ってステレオの針を落としてこれまたビックリ!! スピーカーから流れて来た大音響は雑音なのかKISSのライブなのかさっぱり分からない物で、ビクターのオフィシャルライブアルバムのような音を期待していた無知な私としてはただボーゼンとするばかりでした・・・レコードクリーナーで拭いて何度聞き返してもそれは同じで(当たり前だ)ステレオの前で「だ、だまされた・・・」とヘナヘナになっておりました。
「そうか貴重盤というのはどこかの悪い人が勝手にラジカセかなんかで録音して勝手に売ってる物なんだ、なんて悪いやつらなんだ!!でもそれを買ってる俺も悪いのか??」と憤慨しておりましたが、何度か聞き直してると雑音の向こうにはオーディエンスの歓声や拍手が聞こえ、未だ見ぬ海の向こうのKISSのライブの興奮が伝わってくるではありませんか!! ポールやジーンのMCも何とか聞き取れ、次第にライブ会場にいるような雰囲気がしてくるのです(根が単純なもので・・・) 「こりゃ面白いかも、他にも聴いてみたいぞ!!海賊盤バンザイ、小さなバイキングビッケだぜ!!」と新宿通いが始まり少しずつ海賊盤に手を出すようになってしまいました。
中でも自分が見に行けなかった’77年初来日時の2枚組”Takes Tokyo”武道館公演は、まさかこんなのが出てるとは思わなかったので感動モノでした。
こちらはそのジャケット違いで、当時必死にさがしました。その後も聴いてみなきゃ全く中身が分からない怪しい海賊盤を買い続けましたが、ある時中古レコード屋さんも海賊版が売ってる事に気付き、お安く入手出来るようになりました。(さすがにしょっちゅう新宿まで行くのは面倒くさいと思ってたので)
その後海賊盤はだんだん豪華になって行きカラーのジャケットやボックスセットが出たりして、マニア心をくすぐりましたが、CDの時代になってから簡単に貴重な音源が手に入るようになりデモテープまで流出するようになってしまいました。余りにも膨大な数の音源が世に出て来るようになり、個人的には飽きてしまいました・・・・
「海賊盤」と言えば私にとっては白い紙ジャケットの「貴重盤」のことを指し、CDではなくLPレコードでなくてはダメなのです。西新宿の怪しい店に行って、中身も分からずスリル満点の買い物をするのが海賊盤の本来の楽しみ方なのであります!!!う〜ゾクゾクしてきたぜ!!
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