郷愁の電子フラッシャー、セキネVX GTOの幻
車ネタばかりやっていると皆様から「あいつは正気か」と怒られそうなので今回はクルマ以上に魅力的なスーパーマシンのお話です。
70年代の初頭から中期にかけて、日本の少年向け自転車界では一大ブームが起こっておりました。もはやお笑いのネタとしても古過ぎるそれは、自転車のくせに巨大な方向指示器「電子フラッシャー」を搭載したサイクリング車たちでした。単一電池をごっそり入れて車体重量を過度に重くしながらも誇らしげな電子音と共にウィンカーを点滅させて走るそいつらは子供たちの憧れの的となったのです。各メーカー思考を凝らした電子フラッシャーを搭載し、独創的なデザインはどんどんエスカレートして行きました。
そんな中、ブリジストンなどと並ぶトップメーカーのセキネからとんでもないデザインとメカニズムのスーパーマシンがデビューしたのです。
その名は「セキネVX GTO」というネーミングからしてから少年たちを威嚇するような凄いヤツでした。GTOですよGTO!まるでフェラーリGTOかポンティアックGTOか、いずれにしろ「これは自動車デザインの自転車なのだ、なめんなよ!」と設計者の信念が伝わって来ます。巨大な電子フラッシャーは極限に達する大きさ&デザインとなりストップランプも兼ねている15石トランジスタはクラス最大の物となりました。
GTOはのハイメカっぷりはこれだけでは済まされず、「サイクルコクピット」と呼ばれるフロントのヘッドライトユニットにはトリップメーター内蔵のスピードメーターはおろか、驚愕のAMラジオまで搭載されていて伸縮式アンテナをおっ立てて疾走する姿はまさに「走る電子要塞」といった風情でした。
走りにも怠りはなくフロントにはセキネが初採用となる強力なディスク・ブレーキが奢られ、5段変速のミッションのシフターはアメ車並みのデザインで、素敵なセミドロップハンドルもスポーティーで、もはや全てが自転車の域を超えていたのです・・・・カッコいいぜVX GTO!
必死に調べた結果72年発表のフロントドラムブレーキのセキネVX GT(定価¥48,500)から始まったこのシリーズは翌年「超ド級フラッシャー、アストロメカ搭載」の
キャッチフレーズのもとディスクブレーキ仕様のVX GTO(定価¥49,900)となりさらにマイナーチェンジを繰り返し最終型「夕陽のサイクルマン」のコピーで完成形となり定価¥56,900の超高級車となりました。
現在の感覚ですと¥20万近い金額でしょうか、もはや自転車界のフェラーりですな・・・・そういえばテレビコマーシャルもやっていましたよ!
当然こんな超高級車を買ってもらえるのはごく限られた方々となり、Wildman少年の必死の願いもむなしく我が家にVX GTOはやって来ませんでした・・・・当時我が街には1台のVX GTO(最終型)が存在し指をくわえて眺めておりました。2学年上のトヨタ系ディーラーお偉いさんの息子様の物で、颯爽と走る電子要塞に憧れた物でした。
「俺もニッポン放送全開で走ってみたい、電子フラッシャーを点滅させたい!」と夢を膨らませていましたが結局どう頑張っても納車には至りませんでした。その後この電子フラッシャーブームは一気に下火となり、より本格的な「ロードマン」等のスポーツ車が主流になり、一瞬の打ち上げ花火のような存在の電子フラッシャー搭載車たちは姿を消して行きました。まるでホンダビート50に通ずるものがありますね・・・・
入手した2冊のカタログを見ていると興奮してきます。もしかしたらビート購入時のようにどこかにデッドストック車両が眠っているかも・・・と妄想が膨らんで来ます。
もはやセキネサイクルも存在せず、40系クラウン以上にパーツの供給も困難なVX GTOシリーズですがいつか再会して乗ってみたいものです。21世紀の横浜の街を電子フラッシャーもきらびやかにAMラジオ全開で疾走する幻のVX GTO・・・・カッコよすぎますね。